わたしはどこへだってゆける

f:id:mizuumi_no_asa:20170116014018j:plainあの日、これからの人生を余生のように生きると決めた。一度投げ出した命を大切におもうなんて、わたしには無理だった。おおきなしあわせも無ければかなしみもない暮らしを。日々を淡々とこなすことだけを考えていた。そんなのつまらないよとある人は言ったけど、わたしはそれで満足だった。どうせ一度死んだようなもの、もうどうだってよかった。自分の人生に、なんの興味もない。困ったら死ねばいい。死はいつでもそばに、わたしのなかにひとつの選択肢として存在していた。


だけど、一度、生きたいと思ったら、死ぬことが怖くなってしまった。それは希望であり、絶望だ。でも、いろんなたいせつなことを、知らずに死ぬところだった。生きたいと思えて、よかった。あのとき、死ななくて、ほんとうによかった。

いまのわたしは、何がかなしくて泣いているのか、そんなことも分からない。ストーブの前で丸くなっていると猫が寄ってきてなみだを舐めた。ざらざらした舌が痛くて笑えた。もう寝よっか
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今日は、空気が氷のようにつめたいと思っていたら、たくさん雪が降った。ふわふわとおおきなかたまりが落ちてくる。こんな日は家の窓から雪を眺めていたいよ、と思いながら、職場のちいさな窓から外を眺める。つねに動いているものを見るのは飽きないね。煙草の煙とかさ。青く光っているような景色をみていると「スノードームの中みたい」と隣の女の子が言った。そうだね、と言いながら、わたしはまったくべつのことばかりを考えていた。