外は雨
同級生が死んだ。交通事故だった。メディアで散々食いものにされたあげく、街が彼のことを忘れかけたころ、彼は行ってしまった。
彼はこんこんと、2週間眠り続けた。機械に生かされている彼を前にして「今後一命を取り留めたとしても、状態は良くて寝たきり、もしくは植物状態でしょう。」と医者は言った。こんなのドラマか小説でしか聞かないフレーズだと思っていたのに、現実にあったなんて。
野球が大好きで明るくておしゃべり、絵に描いたような人気者で、お見舞いにはいつもたくさんの人が来ていた。会うことは、出来ないんだけど。
彼のお母さんが言った。「もしこのこの目が覚めても、もう話すことも出来ない、野球も出来ない。そうなるとこの子は苦しむと思う。だからもう、目を覚まさないほうがいいんじゃないか、とさえ思うの。」毎日泣いて、苦しんで、お母さんはその結論にいたったんだと思う。それにしても、こんな悲しい言葉がこの世にあるのかよ、と思って少し泣いた。「この子が選んだほうを受け入れるしかないわ」とお母さんは悲しそうに笑った。
それから数日後、彼は死んだ。
死ぬってなんだ。自分が死ぬことばかり考えていたけど、人が死ぬって、なんなんだ。空間にぽっかり、穴が空いてしまったみたいだ。
人は、しらないうちに未来の話をする。来年には、冬になったら、あしたは。
30までには結婚したいな、って言ってたじゃん。身体を鍛えようと思うって、彼女と旅行に行きたいって、言ってたじゃん。どれも叶わなくなってしまった。
彼は真夏に死んだ。わたしは秋を生きようと思う。